化学は、物質の構造、性質、反応を対象として研究する自然科学の最も基本となる学問分野であり、その名、「化け学(ばけがく)」が示すとおり、「もの(物質)作り」や「もの(物質)のつくり(構造)や性質」を扱う学問です。自然界に存在する物質の構造や反応のメカニズム、また興味ある性質や機能がどのように現れるかを調べ、そこで明らかになった原理に基づいて新しい反応や物質をデザインし、新しい価値を創造するのが「化学」という学問です。

宇宙や生命のいとなみや、われわれが目にする多くの自然現象は化学現象であり、自然の豊かさを理解するためには化学の知識を深めねばなりません。分子のレベルで自然と対話し、自然を理解し、またその知識をもとに新たな物質を作ることは化学者にのみ許された喜びです。

自然界に存在する物質は多様な構造と性質を有し、優れた物性や強い生理活性をもつため、応用、活用されているものが数多くあります。天然に存在する様々な物質の構造の決定、反応性の解明、有用な物質の合成などは、化学の中心的研究分野でした。化学は、物理学、生物学、地学などの理学各分野と密接に関連しながら発展し、工学、農学、医学、薬学などの応用分野の基盤となってきました。現代の化学はさらに進んで、新しい構造・物性を有する化合物の創製と性質の解明、生体分子の構造と反応機構の解明、生理活性物質の合成など、物質科学と生命科学の広い学術分野に対して、物質に関する基本的学問としての重要な役割を担っています。

今日、現代社会は物質科学を基礎として成り立っており、食料、環境、健康、エネルギー、情報の社会諸問題の解決に、化学の寄与が大きく求められています。地球温暖化やオゾン層破壊、廃棄物中の有害物質などの環境問題は、化学と密接な関係にあり、医学、生命科学における生命の倫理に関する問題も、化学と無縁ではありません。このような人類全体の緊急な問題を解決できる鍵を握るのも化学であり、本学科においても、新たな時代にふさわしい化学を生み出す努力が続けられています。