数理学科

数学は自然科学における共通言語として、それらの学問の発展に不可欠なものであり、近年では社会科学においても重要な貢献を果たすようになっています。また、数学はギリシャ以来の人間の知性の最高の産物のひとつとして、芸術にも通じる面をもっています。実際、数学の魅力は定理・事実の発見の喜びにあるだけでなく、理論・構造の美しさにもあります。

高等学校までの数学の勉強は、教科書に書いてある定理や公式を理解し、それらの応用として、与えられた練習問題を解くことが目的でした。それは先人が開拓し、充分に舗装された道をまっすぐに歩むことに似ています。途中で雄大な光景に遭遇し感銘を受けることもあるであろうが、それらはすべて準備されたものです。

数学の創造活動とは、誰も踏み込んだことのない荒野に道を切り開くことに例えることができます。そして、数理学科で教えられる数学は時代とともに変わり新しくなっていく…。その中には教員自身によって見出だされた定理もあるでしょうし、これを学ぶ学生の側にも、数学を原理に立ち返って理解しようとする姿勢や積極的に創造に参加する態度が求められるのです。

数学はその発展とともに、細分化、専門化が著しくなるように見えますが決してそうではありません。高度に専門化された個々の分野同士の間に思いがけない相互関係が見出され、それが新たな学問の発展を促すことも多くあります。これは数学内部だけに限らず、数学が他分野の発展に貢献したり、逆に他分野からの刺激が新たな数学の芽生えを促し、大きな発展につながることもあります。それは数学の持つ、“本質を取り出して論じる”という性格に依っています。分野の特殊性を取り除いて本質に注目すれば、数学の問題として統一的に論じることができるのです。それゆえ、現代に生きる数学者は、研究室に閉じこもり、机に向かって暗中模索しているだけではなく、周辺領域の研究者との接触を密にし、どんな研究が進行しつつあるかを常に把握しながら仕事を進めています。