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研究科各領域について

生命理学領域

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分子神経生物学

動物は、常に変化する環境を的確に察知し適切な行動を選ぶことで、自らの生存の確保や子孫の維持を行う。 当研究室は、その行動の基盤となる神経回路動態の分子機構・制御機構の解明を目的として研究を進めている。 動物の精巧に出来た応答行動のメカニズムの解明には神経系の網羅的理解が必須である。 しかし、動物が高等になるほどニューロンの数は増加し、ヒトの脳に至っては約1000億個の神経細胞によって構築されているため、その神経回路の配線の組み合わせは天文学的な数値になる。 個々の神経細胞(ニューロン)の物理化学的性質は、動物の進化を通じてほとんど変化していないため、我々は、特定の行動に関わるシンプルな神経回路の機能を網羅的に解明することによって、複雑な神経回路機能の基本原理を明らかにしたいと考えている。 具体的には、全神経回路網が同定されているC.elegans(Caenorhabditis elegans)と呼ばれる線虫を実験モデル系として、特定の行動を、感覚、環境情報の記憶・学習、そして応答行動として出力するまでのすべての過程に関して、分子<細胞<神経回路<個体の4つの階層レベルを統合して網羅的に理解することを目指している。
C.elegansの神経系はわずか302個のニューロンから成り立っているが、水溶性物質(味)、揮発性物質(匂い)、酸素などの化学刺激 や、接触や温度などの物理刺激に対して応答することができる。 特に、温度に対する応答行動(温度走性)は非常に高度な神経の可塑性を伴う。 これまでに、我々は温度走性を制御する神経回路を同定し、その形成や機能に関わる分子を明らかにしてきた。 現在、温度情報の記憶や学習といった、より高度な神経活動を制御する分子および神経回路の同定を行っている。
さらに、ニューロン同士を接続するシナプス部位に着目し、神経回路内で神経情報がシナプスを介してどのように伝達されるのか、ニューロン内でシナプスがどうやって適切な位置に局在するのかに関して解析しており、それら個々のメカニズムがどの様に行動動態へ影響するのかを明らかにしつつある。 研究手法としては、確立された分子遺伝学に加え、細胞生理学やライブイメージング、オプトジェネティクス、画像解析、自動顕微鏡制御など様々なアプローチを積極的に取り入れて研究を進めている。 また、これらの解析から明らかにされたメカニズムについて、数理モデルや計算機シミュレーションを用いて検証することも進めている。 生物学だけでなく、情報科学や物理学を専門に学んだ場合でも、神経科学に興味があれば応募を歓迎する。

脳回路構造学

音楽や言語など、音は私たちの生活に様々な彩りを与える。 一方で自分の生存とは無関係な音は、背景音として無視することができる。 このように、動物の脳は、感覚器によって受容された音がその個体にとって意味を持つか否かを瞬時に判別できるのである。 しかし、どのような神経回路がどのように動作してそのような判断を導いているのか、その神経機構には多くの謎が残されている。 私たちは、小さな脳を持ち、神経機能を制御できる実験ツールが整備されたモデル生物であるショウジョウバエを主に用いて、個体にとって重要な音とそれ以外の雑音を弁別する神経回路基盤の解明に取り組んでいる。 ショウジョウバエの雄は求愛時に、種に固有の音パターンを持つ「求愛歌」と呼ばれる羽音を奏でる。 このような特徴的な音がショウジョウバエの脳でどのようにして解読されるのかを理解する目的で、私たちは現在、神経解剖学、生理学、行動実験、数理科学を組み合わせた解析を進めている。 また、求愛行動を制御する神経機構一般や、その進化についても研究を開始し、近縁種間での比較や、ショウジョウバエと同じく聴覚を用いて配偶行動を行う蚊を用いた解析も行なっている。 このような研究から、私たち哺乳類にも共通する、脳の動作原理を解明することを目指す。

細胞内ダイナミクス

細胞内のダイナミックな現象の理解を目標としている研究室である。 現在最も注目しているのは微小管細胞骨格である。 微小管がどのようにして生成され、動的性質を獲得し、さらに、細胞分裂装置・スピンドルなどの高次構造を形成するのかを解明したいと思っている。 そのために、動物培養細胞、酵母およびヒメツリガネゴケを材料に、高解像度の生細胞イメージング、生化学および遺伝学的解析を組み合わせて、分裂制御タンパク質の機能解析を行っている。 また、細胞間接着の解離機構や細胞自死の細胞断片化機構などについて生物毒素等を用いてその分子機構も研究している。

細胞間シグナル

分泌型ペプチドをはじめとする細胞間シグナル分子と、細胞膜貫通型の受容体タンパク質を介した細胞間情報伝達機構は、多細胞生物のかたちづくりを支える重要なしくみのひとつである。 特定の受容体に特異的に結合するシグナル分子はリガンドと呼ばれるが、複雑な細胞内情報伝達カスケードの最上位に位置するリガンド−受容体ペアを見つけ出すことは、生物学における大きな課題である。 また、植物特有の管状組織である篩管では、非分泌型ペプチドが長距離移行して情報を伝達することも明らかになっている。 さらに細胞間に存在する多数の糖ペプチドも植物の成長に多面的に関わる。 当研究グループでは、こうした新しい細胞間シグナルの探索やその作用機構の解明を基軸として、植物のかたちづくりや環境適応のしくみの解明に取り組んでいる。

生殖生物学

生き物の性は遺伝子や環境などさまざまな要因によって決まる。 また性を転換させてしまう生き物もいる。 このような性決定の多様性や性転換の背後には、雌か雄かのどちらか一方になることを保障する「性のコアメカニズム」が存在し、幹細胞の制御とも関連して機能する。 このメカニズムは「卵巣や精巣の大きさ」や「配偶子形成のタイミング」など、生殖の他の現象とも連動して多様な生殖様式 をもたらす原因となることもわかり始めた。 メダカは遺伝的に性が決まる動物でありながら環境による性決定や性転換が解析でき、生殖のさまざまな現象の解析も可能である。 研究室では、トランスジェニック個体や突然変異体作製、キメラ解析、網羅的遺伝子発現解析、イメージング等の技術を駆使し、性や生殖の多様性をもたらす性のコアメカニズムが幹細胞制御とどのように連動して性を決めるのか、どのように他の生殖現象をも制御するのか、その分子機構の解明を行う。 またそこから得られた結果を他の生き物を用いて検証し、生き物がどのように分子機構を変容させ豊かな性や生殖の現象を示すのかを理解することを目指す。

発生成長制御学

生物の発生と成長はさまざまなレベルの制御システムにより調節されている。 私たちは、その調節のしくみの普遍性と多様性の理解をめざし、多様な生物を用い以下の広範な研究に取り組んでいる。 ①モデル植物シロイヌナズナとヒメツリガネゴケを用いた、植物の形態形成・細胞増殖に関与するオルガネラ機能の分子生物学・細胞生物学的研究。 ②ショウジョウバエを実験動物として用いた、生体防御、発生における形態形成、細胞分化などの制御メカニズムに関する研究。 ③ショウジョウバエを用いたミトコンドリアの特殊化が発生過程において細胞の分化や機能を調節する機構の遺伝学的研究。

細胞制御学

細胞の分裂・分化過程において、細胞の形態的・力学的表現型(形状・剛性・張力・運動性など)を規定する重要なシステムが細胞骨格系である。 細胞骨格蛋白質の代表格であるチューブリンやアクチンが細胞質内に連続的なネットワークを形成するのに対し、セプチンは不連続なクラスターとして散在する点でユニークであり、解明すべき謎が多く残されている。 当グループはこれまでに、セプチン細胞骨格系が細胞分裂以外にも神経突起形成やシナプス伝達などを介して個体レベルの形質(行動)や精神・神経疾患に関与するこ とを示してきた。このように、細胞分裂・分化関連因子を欠損(または過剰発現)する遺伝子改変マウスや初代培養神経細胞の解析を 通じて、ニューロン・グリア間相互作用、記憶・学習など高次機能、神経変性のメカニズムの謎を解明していくことを研究の柱としている。

分子修飾制御学

私たちの体の中でタンパク質は必要なときに合成され、その役目を終えると分解されています。 従来タンパク質はその合成過程で厳密にコントロールされ、分解過程は細胞内で不要になったものの単なるゴミ処理機構と考えられていました。 しかしながら近年の研究により、実はタンパク質分解もさまざまな生体機能を積極的にコントロールする制御系であることが明らかになり、非常に関心を集めています。 私たちは、この中でもユビキチン-プロテアソーム系を介したタンパク質分解機構に注目し研究を進めています。 特に最近では、ユビキチン-プロテアソーム系で分解されるタンパク質を新たに次々と見つけており、その分解の仕組みと生理的意義の解明を目指して研究を行っています。 その結果、細胞内のオルガネラの動態、代謝、飢餓応答、ストレス耐性をはじめとする様々な過程において ユビキチン-プロテアソーム系が果たす新しい働きが見えてきてい ます。 研究材料は、真核細胞のモデルとして出芽酵母を主に用いており、分子レベルおよび細胞レベルでの解析を中心として研究を 行っています。
細胞膜は脂質二重層構造を基本としますが、その内層と外層で脂質の組成や役割が大きく異なります。その様な非対称性は細胞の生存に必須であり、その異常は多くの疾患とも関わっています。 最近、脂質非対称性の維持・調節にユビキチン修飾が深く関わることが明らかになりました。 そこで、ユビキチン修飾を通した生体膜の恒常性維持機構にも注目して研究しています。
さらに私達はこのユビキチンープロテアソーム系を利用することにより人為的にタンパク質の分解を制御する系の開発も行っています。 この系は植物におけるオーキシン依存的なユビキチン化システムを植物以外の生物種に導入したもので、オーキシン添加によって標的とするタンパク質を速やかに分解・除去することが可能です。 私達はこの系を用いることによって、様々な生命現象(DNA複製、染色体分配、核内構造など)の理解に努めるとともに、様々な生命現象を人為的に制御することができないかという視点からも研究を進めています。

超分子構造学

個々の遺伝子が作り出す蛋白質が互いに複雑に相互作用しながら生理機能を果たす仕組みを解き明かすことがポストゲノム研究の一つの大きな柱であり、蛋白質複合体の構造解析は特別に重要な意義をもっている。 私たちは細胞内輸送、転写制御、細胞周期制御、細胞骨格など、細胞生物学・生理学において重要な位置を占める研究課題を取り上げ、特に中心的役割を果たす蛋白質複合体の原子レベルの構造解析を重視し、さらに構造をベースにした機能解析による検証を行い、分子メカニズムを厳密に解き明かすことを目指している。 X線結晶解析、クライオ電子顕微鏡やNMRなど、多彩な手法を相補的に駆使した最先端の構造生物学研究を推進している。
また、生体膜の動的形態分子制御機構の解明にも取り組んでいる。 リポソーム(人工膜小胞)は脂質二重膜の最も単純化したモデルで、多くの生体膜の研究に用いられている。特に直径が1μmを超える巨大リポソームは、光学顕微鏡を使い直接リアルタイムで観察することができる。 この巨大リポソームを用いて、膜の裏打ち構造を構成する蛋白質、膜作用性ペプチド、生体由来の両親媒性化合物などとの相互作用によって引き起こされる膜のダイナミックスを捉え、その仕組みを明らかにすることを通じて、生体膜の動的な形態制御の分子機構の解明を目指している。 さらに脂質膜の表面での、蛋白質やペプチドの分布や動態を決める機構についても研究を進めている。

異分野融合生物学

最先端計測機器の登場は、今後の生命科学分野の研究スタイルを大きく変貌させることになる。 生命を構成する最小単位である1細胞レベルで生命現象を理解する試みが始まっている一方で、これらのアプローチには多種多様でかつ膨大なデータを伴う。 そして、巨大データが持つ情報を100%抽出し、利用することは極めて困難である。 なお、従来の手法で取得される臨床・実験データでさえ内包する情報を不完全にしか利用できていない場合もある。 生命現象は本質的に高次元で非線形であることを考えれば、数理科学、情報学、物理学など、異なる分野で開発されてきた理論や蓄積されてきた知見を利活用することで、データを制することが期待できる。 つまり、適切な分野を融合することで、定量的な観点からメカニズムを追求する次世代の生命科学分野を創出できる。 私達の研究の“心臓”となっている武器は「数理モデルとコンピューターシミュレーション」であり、異分野のクロスオーバーを前提とした生物学研究を進めている。 そのために、これらの武器をもって臨床や実験研究の現場に入り込み、データ取得前段階から研究デザインに限界までコミットする等、人⇔人あるいはグループ⇔グループの有機的連携を 重視した研究スタイルを貫いてきた。
究極の目標は、生命の発生から死に至るまでの現象を定量的に理解すること、であり、特に、病原体感染や遺伝子異常により誘導される恒常性の変容や破綻が引き起こす表現型とその制御・操作に関連した研究に注力している。 さらに、生体内では、細胞内での遺伝子発現の制御からそれぞれのタンパク質が機能し、細胞としての特徴を生み出す。 そして、細胞間で相互作用し合いながらシステムとして機能する細胞群となり、生体内の組織を維持する。 私たちは、これらの過程の時間変化を統合的に記述するための研究も精力的に推進している。 この様に、様々な生命現象のエンジンになっている『増殖・分化・感染・変異・進化・適応する要素』が組み合わさって創発するシステムの定量的分析を可能にするユニークで汎用性の高いアプローチを開発し、個別の生命現象に対する理解を深める国内ではじめての異分野融合生物学の研究拠点である。

遺伝学

多細胞生物では、地球上の生物と同様に、細胞同士が互いに協調したり競合します。 そして、そのような細胞間のコミュニケーションが、特定の形・大きさの組織や器官を構築し、またその恒常性を維持する上で重要な役割を果たしていることが近年分かってきました。 さらに細胞間コミュニケーションは、正常な状態の破綻によって引き起こされる「がんの発生や進展」も制御することが分かってきています。 当研究室では、細胞間コミュニケーションに着目した個体レベルでの解析を行う上で優れたモデル系であるショウジョウバエを用い、細胞間コミュニケーションを介して (1)発生過程において特定の形・大きさの組織が構築される仕組み、 (2)恒常性が維持される仕組み、 (3)がんの発生や進展が引き起こされる仕組みを解析しています。 一方で、個体レベルでの恒常性を維持する仕組みも解析します。 蚊の食物である花の蜜と血液は、摂取されるとそれぞれが異なる器官へと到達します。 食物の種類に応じたこのようなシステムが、どのようにして細胞集団の恒常性を維持しながら実行されているのか解析を進めていきます。 また、蚊の食物が体内で選別される生理的意義について理解することを目指します。 これらの研究を通して、多細胞生物の形づくりやその恒常性維持、そして、それらを支える細胞集団の動作原理の理解を目指します。

生体機序論

生物は生体内のプログラムあるいは外部からの刺激により、細胞および個体レベルでその機能や形態を自在に変化させることで、細胞増殖・分化・発生・再生などのさまざまな生命現象を制御している。 本研究分野では、これらの生命現象を制御する分子機序とそのシグナルネットワークについて、線虫および培養細胞を用いた遺伝学および分子生物学的な解析を行っている。 線虫をモデルとした研究では、主に神経軸索の形成および神経切断後に起こる軸索の再生について研究を進めている。 これまでに、増殖因子・コラーゲン・セロトニン・体内マリファナ等の細胞外シグナルが、切断軸索内のJNK型MAPキナーゼ経路やcAMP経路等を介して軸索再生を制御することを明らかにしてきた。 また培養細胞を用いた研究では、パーキンソン病関連因子LRRKによる細胞増殖・細胞内輸送・シリア形成およびオートファジー等の制御に着目し、それに関わる因子の生体内での機能や制御メカニズム、上流および下流のシグナルネットワーク等について解明を進めている。 これらの研究を遂行することにより、それぞれの生命現象の制御機構を明らかにすると同時に、将来的な創薬・医療の礎となる成果を得ることを目指している。

植物生理学

本グループでは、植物における環境応答のシグナル伝達の分子機構について主に研究を進めている。 土に根を伸ばし固定的な生活を営む植物は、変転する周囲の環境(光、水分、栄養、温度等)に的確に応答し、成長しなければならない。 植物の表皮に存在する気孔は、これらの環境変化に応答して開閉を行うことにより、光合成に必要な二酸化炭素の取り込み、蒸散や酸素の放出など植物と大気間のガス交換を調節している。 我々は、このような特徴をもつ気孔孔辺細胞を環境応答のモデル材料として、青色光による気孔開口反応、植物ホルモン・アブシジン酸や二酸化炭素による閉鎖反応のシグナル伝達について、生理・生化学・分子遺伝学的手法、ケミカルジェネティスクを駆使した解析を進めている。 また、これらの成果に基づき、気孔開度を人為的に制御する技術開発にも取り組んでいる。 さらに、植物細胞の恒常性維持、様々な物質輸送や細胞伸長に関与する細胞膜プロトンポンプ(H+-ATPase)の活性制御機構についても解析を進めている。 加えて、本グループはトランフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)にも所属しており、有機合成・化学などの異分野との積極的な融合研究も展開している。

細胞生物学

真核生物の多細胞化は、生命が誕生してから現在に至る進化の歴史の中で最も重要なステップの一つとして位置づけられる。 この多細胞化に必須だったのが、個々の細胞同士を結び付ける細胞接着機能の獲得である。 細胞接着を体構築の基礎とする多細胞生物において、細胞と細胞、あるいは細胞と基質がどのような機構で接着するのかを知ることは、細胞の分化や極性の発現、組織・器官の形成・ 維持などのより高度な生命現象のメカニズムを解明するためには、きわめて重要である。 当研究室では、細胞-細胞間の接着装置アドヘレンスジャンクションと細胞-基質間の接着装置へミデスモソームについて、分子および細胞レベルで研究をおこなっている。 特に、上皮組織の分化・形成・維持における、これら接着装置とその構成タンパク質の役割について注目し、解析している。

染色体生物学

あらゆる生物において、ゲノムを次世代に正しく分配・継承することは、細胞の正常な分裂と増殖を支える最も重要な基盤である。 真核生物のゲノムは、「染色体」というかたちをとることで、ゲノムの均等な分配を可能にし、染色体構築過程における異常は、染色体の不分離、延いては異数化、癌化、細胞死の原因となる。 当研究室では、染色体という構造がいかに構築され、細胞の分裂に際していかに正しく分配されるのか、そのメカニズムを明らかにすること、そして細胞周期を通じて染色体の構造をダイナミックに変化させる分子基盤を明らかにすることを目指している。 特にゲノムの複製に伴って確立され、分配に伴って切断される姉妹染色分体間の接着や、分裂期における染色体凝縮に焦点をあて、アフリカツメガエル卵、哺乳動物細胞、昆虫細胞、菌類を用いた多角的な細胞生物学的・生化学的アプローチ、および一分子生物学的アプローチにより、これらの分子メカニズムと進化的保存性を明らかにしていく。 さらに染色体の構造変換、染色体機能と遺伝性疾患の関連を明らかにする研究も行っている。

海洋生物学

臨海実験所は、三重県鳥羽市菅島の海岸に設置されており、豊富な生物資源を研究材料に用いることが可能である。 実験所では、3つの研究チームが多様な海洋生物資源を用いて分子から生態までを網羅する研究を展開し、未知の生命現象の解明を目指している。 生物多様性・系統進化学チームは海産無脊椎動物の多様性分類、系統に基づいた形態および生態進化の研究を進めている。 海洋生化学チームは、海洋無脊椎動物や藻類を対象として、生物と生物の間でやりとりされる分子の探索や生合成機構の解明に取り組んでいる。 海洋細胞生物学チームは菅島近海の海藻や菌類を材料に、細胞の成長、増殖、再生機構の解明を目指している。

多細胞秩序

多細胞生物の個体内では多種多様な多くの細胞が互いに連絡を取り合い協調して活動している。 その結果、多細胞の集合体である個体の形が巧みに作られたり、環境の変化に個体として柔軟に対応したりすることができる。 私たちの研究室では、それら細胞群の秩序がいかに作られ維持されるのかに興味を持ち、そのために作動する仕組みの解明を目指している。 とりわけ、芽生えた場所の変わりゆく環境の中で柔軟に生き抜くための様々な戦略を進化の中で獲得してきた植物を題材に、多細胞秩序のために細胞間で伝達される様々な情報の分子実体の追求や、その情報伝達の仕組みの解明に取り組んでいる。 また、それら情報分子群の働きの人為的な改変や、人工化合物を活用して多細胞秩序の新制御点を発掘する試みも行っている。

植物分子シグナル学

免疫系はホ乳動物を始めとした生物に広く保存されている感染防御応答システムであり、植物は固着の生活を営むが故に、極めて高度に発達した制御機構を保有している。 私たちは、主にモデル植物であるシロイヌナズナを材料とし、特に植物ホルモンが誘導する免疫応答システムの解明を試みている。 免疫系は、UV、高温等の非生物学的ストレスや昆虫等の生物学的ストレス、さらには生長制御系と相互作用することにより最適化されるが、その分子機構の大部分は明らかになっていない。 順逆遺伝学的手法に加え、トランスクリプトーム解析、独自に開発したタンパク質合成技術や生化学的アプ ローチにより重要制御因子を網羅的に同定し、機能解析を進めている。
また、上記研究テーマに加え、古細菌等を材料とし、次世代シーケンサーを活用して、ゲノム、トランスクリプトーム、リボソームプロファイリング、ChIP解析を行うことで、様々な生命現象を物質(核酸、タンパク質)の変化としてとらえる研究を進めている。

器官機能学

脊椎動物において、受精卵から複雑な構造と機能を有する器官が形成する過程は、正確に制御されている。 私達の研究室では、ゼブラフィッシュやメダカ等の小型魚類を用いて、大きく二つの研究テーマで、脊椎動物の器官形成および機能を制御する分子メカニズムの解析を行っている。 一つは、動物の複雑な行動を制御する神経回路に関する研究である。 発生過程において、神経組織では前後軸に沿って個々の神経領域が決定され、その領域で神経幹細胞または神経前駆細胞が産生される。ニューロンは、これらの細胞から産生され、細胞移動しながら神経突起を伸長し神経回路を形成する。 本研究室では、神経回路のモデルとして、小脳に焦点を当て研究を進めている。 小脳神経回路形成の分子メカニズムを理解するとともに、運動学習や恐怖応答学習等の高次機能における小脳神経回路の役割の解明を目指している。もう一つのテーマとして、神経堤細胞の分化機構の解析を行っている。 神経堤細胞は、脊椎動物初期胚の背側に形成される幹細胞であるが、色素細胞を含む種々の細胞種に分化しながら移動し、機能を発揮する。 神経堤細胞から多様な細胞へ分化過程を制御する遺伝子カスケードの解明を目指している。

微生物運動

細胞が生きて行くためには、激変する環境に対応するために運動し、応答して生理機能を最大限に発揮する必要がある。 この基本的な生命現象を理解するためには、細胞の運動機構や環境応答機構を理解するだけでなく、生理機能に重要な超分子構造(器官)がどのようにして適切な時間・場所に、適切な数だけ形成・配置されることで、そのはたらきを最適化しているのかを知る必要がある。 私たちの研究グループでは、「細胞がどのように運動し、環境の変化に応答し、器官形成位置と個数を決定しているのか?」という課題の解明を目標とし、多くの原核生物で運動装置として用いられているべん毛、特にそのモーターに焦点を当てた研究を展開している。
べん毛モーターは左右両方向に高速回転し、かつ瞬時に方向転換ができるだけでなく、負荷を感知してエネルギー変換能を調節することができる。 さらにこのモーターは、ATPではなく細胞膜を介したイオン駆動力から回転力を生み出す他では例を見ない独自の化学-力学エネルギー変換機構を備えた超分子ナノマシンである。 しかし、その作動原理は謎に包まれている。 私たちのグループでは、べん毛モーターの作動原理に加えて、どのようにして適切な場所に適切な数だけ形成されるのか、そのメカニズム解明を目指し、分子生物学(変異体解析)・細胞生物学(タンパク質局在、運動能)・生化学(タンパク質精製・活性測定)・構造生物学(X線・電子顕微鏡解析)の手法を用いて研究を進めている。 細胞運動は原核生物から高等動物まで保存された現象であり、私たちは扱いが容易で様々な手法を適用できる細菌の利点を最大限に生かした研究を展開して、生命現象の基本原理に迫ろうとしている。

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